国を挙げて行ったスローガンは果たして成功するのか。
一時期こんな言葉がはやりました。
「貯蓄から投資へ」
2000年代初頭からそんな動きがあった様な気がします。
おそらくこのスローガンによって
・銀行窓口での投資信託商品の解禁
・株式の売買手数料の自由化
・さらに郵便局でも投資信託商品の販売
と投資部分での規制緩和がどんどん行われていきました。
さらにインターネット証券の普及も重なり、個人が簡単に株の売買が出来る様になりました。
この流れ、というのは果たして成功したのでしょうか。
まだ途中なら今後成長するのでしょうか?
①そもそもどうして「貯蓄→投資」という流れなのか。
自分が所有している資産を「貯蓄」しようが「投資」しようが本人の自由です。
投資をすれば企業の株を買う事になりますし、貯蓄をすれば貯蓄したお金は貯蓄した金融機関を通じて企業に貸付金という形で流れます。
企業に直接お金が入るか金融機関を通じて入るか、という違いだけです。
それなのにどうしてわざわざこんな流れを作るのか、という事です。
僕はこの流れ、国策なんだと思います。
もっというと「株価対策」なのかなあ、とも思っています。
バブル崩壊後株価は下降の一途をたどっていました。
株価を上昇させる為にはどうすればいいか。
誰かに買わせればいい訳です。
その為のスローガンが「貯蓄から投資へ」という事なんだと思います。
その結果がいわゆる「アベノミクス」といわれる株価上昇の流れを作り出したという事なんでしょう。
②投資に必要な環境を整えたのか。
僕は国民が投資に興味を持つのが悪い事だとは思っていません。
世の中には株に限らず様々な投資があります。
会社員のみを一生続ける方で投資も何もやらない、という方で税金の事、社会保険の事等に比較的関心が無く過ごされる方が多数みえます。
世の中の方が投資を通じてそういったものへの興味を示す事は素晴らしい事だと思います。
ところが「貯蓄から投資へ」というスローガンを作って広げたのはいいとして国は本当に必要な環境を整えたのでしょうか。
確かに証券会社でなくても投資信託を買える様になりました。
インターネット証券も普及し、一昔前とは考えられない様な安い手数料で株の売買も可能になりました。
今や手数料無料という、少し前までなら考えられないネット証券も存在します。
ただ投資をするのに必要な本当の意味での環境は整えたのでしょうか。
それは投資を勧める上での「リテラシー教育」です。
そもそも投資とは何か。
株式に投資をするという事はどういう事か。
どんなリスクがあるのか。
投資先を決めるのにどういう観点に注意をしなければならないのか。
そういうことを国はどこまでやったのでしょうか。
これをせずにただスローガンだけ唱えて投資商品を売りやすくする、というのは投資商品を扱う金融機関に手数料を稼がせるだけの施策にしか過ぎないのではないでしょうか。
そういう事を疎かにしてハード的な環境だけを追い求めた結果何が残ったのか。
「いつまでたっても株で利益を上げられない個人投資家」
だけが量産されただけだと思いますし、リテラシー教育の場が充実しない以上、この現状は改善されないと思います。
③そもそも株価は上がる事前提なのか
株価というのは上がる事もあれば下がる事もあります。
こんな事は当たり前の事です。
それを知らずして投資をするのか、という事です。
株価が下がったら損切りすればいい。
損切りするのには株価ボードに張り付いて見ていなくても証券会社にある注文機能を使えばだれでもできます。
それは「株価というのは下がる事がある。」という当たり前の事実を僕が認識しているだけなのです。
「株価は下がる事がある。」
という当たり前の事実。
それに対する備え。
それに対する備えすら教えない状況で本当に「貯蓄から投資へ」なんて言える? という事です。
④本当に「貯蓄から投資へ」を根付かせるには。
では本当に「貯蓄から投資へ」という流れを根付かせるにはどうすればいいでしょうか。
僕は「株価が下がった時の備えをしっかり教える。」という事に尽きるのでは、と思います。
投資商品のリスクに対する説明は投資信託のパンフレットにも記載されています。
非常に細かい文字で。
「そうじゃねーだろ!」
とというのはつくづく感じます。
過去に起こったバブル崩壊、3.11同時多発テロ、ライブドアショック、リーマンショック…。
こういうショックに株価はどうなったのか。
ニューヨークダウはどの様に動いた?
ナスダックは?
日経平均株価は?
こういう過去に起こった最大級のリスク、その時の経済指標や株式相場がどう動いたかをしっかりアナウンスして、それに対する備えをしっかりしておけばいい、という事になります。
9月1日は大正時代に関東大震災が発生した日で防災の日です。
避難訓練も行われています。
同じことをすればいい訳です。
貯蓄は殆ど利息が付かない。
だからしっかりと投資で運用しよう。
ただし投資はこんなリスクがあり、過去にこんな事態が発生している。
だからこういうやり方をすることでリスク回避をしよう。
ここまでしっかり教育を行ってはじめて貯蓄から投資へという流れを推進する事を声高にうたってもいいのではないか、と思います。
逆にリスクに対して
「リスクがある」
としか言わない今の投資教育の無さ、不完全な説明では貯蓄から投資への真の移行なんて果たせるはずもなく、損を抱えた個人投資家崩れを増やすだけではないか、と思います。
⑤今日の結論
投資、ぜひやりましょう。
但しリスクに対する備えはとことんやりましょう。
それには勉強不可欠だと思います。